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2022.09.10

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遠野市でのホップ栽培の歴史をたどる

岩手県遠野市は、半世紀以上に渡りホップ栽培を続けている日本随一のホップ生産地です。遠野市においてどのようにホップ栽培が広まっていったのか、その歴史をたどってみましょう。

遠野市でのホップ栽培の歴史

内容
1963年(昭和38年)遠野でのホップ栽培開始(初年度の栽培面積は7ha)
1965年(昭和40年)ホップ農業協同組合設立
1976年(昭和51年)上郷収穫センター設立
1983年(昭和58年)飯豊ホップ収穫センター設立
1986年(昭和61年)ホップ栽培開始以来、初めてキリンビール株式会社に関わるホップ農業協同組合で第1位の生産量となる
1999年(平成11年)「遠野麦酒ZUMONA(通称ズモナビール)」醸造開始
2004年(平成16年)「キリン一番搾り とれたてホップ生ビール」販売開始
2007年(平成19年)「ビールの里構想」が開始し、「TKプロジェクト」が発足
2015年(平成27年)「ホップの里からビールの里へ」新スローガン誕生

遠野ビアツーリズム開始

遠野ホップ収穫祭初開催(来場者2,500人)
2016年(平成28年)ビールの里構想における地域おこし協力隊制度の導入開始

第二回遠野ホップ収穫祭(来場者4,500人)
2017年(平成29年)株式会社遠野醸造設立

ふるさと名品オブ・ザ・イヤー地方創生大賞受賞

第三回遠野ホップ収穫祭(来場者6,000人)
2018年(平成30年)遠野市・キリンビール・JR東日本盛岡支社で地域連携協定を締結

BEER EXPERIENCE株式会社設立

株式会社BrewGood設立

第四回遠野ホップ収穫祭(来場者7,500人)
2019年(平成31年      ・令和元年)ドイツ式ホップ圃場完成、江刺2号栽培開始

第五回遠野ホップ収穫祭(来場者12,000人)
2020年(令和2年)世界的に有名なホップ博士(村上敦司氏)が遠野に拠点を移し、BrewNote遠野を開業

JTB交流創造賞「選考委員特別賞」受賞
2021年(令和3年)新ブランド「TONO Japan Hop  Country」立ち上げ

1963年に遠野市でのホップ栽培が開始

遠野市でホップ栽培が始まったのは1963年のこと。遠野市はもともと冷災害の多い地域でした。そこで、農家や農業団体、行政は遠野市に適した畑作を模索し続けており、当時、江刺市(現・奥州市)で栽培していたホップに目をつけたのです。

そして、遠野市はキリンビールとの栽培契約を締結。しかし、キリンビールはこれまでに岩手県産ホップを使ったビールを製造したことはありませんでした。遠野市もホップ栽培は初めてのため、互いに未知の世界への挑戦が始まったのです。

初年度は86名の農家がホップ栽培を開始し、栽培面積は7ヘクタールでした。徐々に遠野市でのホップ栽培は拡大していき、そのピークは1983年。その当時、遠野市のホップ栽培面積は112ヘクタールにまで広がりました。キリンビールの指導員も遠野市に常駐して指導しており、キリンビールとしてもホップ栽培にどれだけ力を入れていたかがわかります。

そして1986年には、キリンビールに関わるホップ農業協同組合の中で、遠野市が第1位の生産量となったのです。

しかし、外国産の安いホップが入ってくるようになり、徐々に日本産ホップの需要が減少。ピークを境に、ホップ農家も減少していきます。

遠野市でのホップ栽培の歴史については、下記の記事もご覧ください。
だまっていては何も変わらない!行動でホップの危機を乗り越える#007佐々木悦男
今こそ課題解決を!次世代ホップ農家が栽培を継続できるように #023菊池一勇

遠野麦酒ZUMONA醸造開始

1994年に酒税法が改正されると、日本全国に小規模ブルワリーが数多く設立されました。いわゆる地ビールブームで、1998年頃には300ヵ所以上のブルワリーが存在していたといわれています。

その地ビールブームが落ち着きはじめた1999年、遠野市の上閉伊酒造もビール醸造を開始しました。上閉伊酒造は1789年から遠野で酒造りを営んでおり、「國華の薫」などのお酒を販売しています。

上閉伊酒造が造りはじめたビールは「遠野麦酒ZUMONA」。「ズモナビール」と呼ばれて親しまれており、遠野市のホップを使用したビールを造っています。

遠野麦酒ZUMONAについては、下記の記事もご覧ください。
遠野になくてはならない酒蔵を未来へとつないでいく #015新里佳子
遠野のホップだけを使ったビールと向き合い続ける日々#016坪井大亮

遠野市のホップを使った「とれたてホップ」販売開始

2002年には、遠野市のホップを使ったビール「毬花 一番搾り<生>」がキリンビールから発売されます。このビールは、2004年には「一番搾り とれたてホップ生ビール」と名前を変えて発売。以後、その年に収穫されたホップを使って醸造し、毎年11月頃に発売されるようになりました。

一番搾り とれたてホップ生ビールに使用されるホップ

「一番搾り とれたてホップ生ビール」の缶には、「岩手県遠野産ホップ使用」と書かれており、「遠野の地ビール」だという人もいるほど、地元遠野の人も楽しみにしています。

「一番搾り とれたてホップ生ビール」の特徴は、「IBUKI」というホップのフレッシュな香りです。「とれたてホップ」に使われる遠野で収穫したホップは、乾燥させずに急速冷凍されるため、収穫したてのホップの香りがビールになっても感じられます。

IBUKIについては、下記の記事もご覧ください。
遠野で栽培しているホップの品種・ブランドとは?

ホップの里からビールの里へ!ビールの里構想がスタート

遠野産ホップを使ったビールが造られるようになった一方で、ホップ農家の減少は止まりません。そんな状況の中、2007年には遠野市とキリンビールによって、ビールを軸とした地域活性化を図ろうとする「TKプロジェクト」が発足しました。

また、「ホップの里からビールの里へ」を合言葉に、「ビールの里構想」もスタート。ビールの里構想とは、持続可能な日本産ホップ栽培によって地域を活性化し、ホップの魅力を活用しながら官民一体となって未来のまちづくりに挑戦する取り組みのこと。ビールの原材料を栽培する場所から、新しい産業が生まれる場所へ転換しようという取り組みがスタートしたのです。

ビールの里構想については、下記の記事もご覧ください。
遠野に共感してくれるプレイヤーと日本のビアカルチャーを変えていく#001浅井隆平
遠野へまた戻りたいと思えるようなまちづくりを #004菊池陽一朗
私たちが目指すビジョンについて

1万2000人が集まる遠野ホップ収穫祭

ビールの里プロジェクトの一環として、2015年には「遠野ホップ収穫祭」を開催。初年度は思ったように集客ができず、失敗ともいえるような状況でした。しかし、翌年以降は徐々に参加者が増えていき、2019年には1万2000人規模に。JRも臨時列車を運行するほどの人出で、ホップ畑を見学するツアーも大人気でした。

遠野ホップ収穫祭は、遠野市民が待ち遠しく感じるイベントというだけでなく、全国のビールファンにとっても楽しみなイベントとなっています。

遠野ホップ収穫祭については、下記の記事もご覧ください。
大失敗から1万2000人規模に!年々人がつながる遠野ホップ収穫祭 #003菅原康

遠野醸造設立

2017年には、遠野市内で2つ目の醸造所である遠野醸造が設立。遠野醸造はそのビールが飲める「遠野醸造TAPROOM」を併設しており、「ホップの里からビールの里へ」という活動を下支えするお店としても機能しています。

遠野醸造はコミュニティブルワリーとして、地域農家とのコラボレーションなどを通じて、ビールや遠野市の魅力を発信。2020年からは缶ビールの販売も開始しており、遠野市のふるさと納税の返礼品としても採用されています。

遠野醸造については、下記の記事もご覧ください。
遠野の内外をつなぐハブとしてのコミュニティブルワリー #017太田睦 #018袴田大輔

ビールの里を目指す遠野市の挑戦

遠野市では、農家の高齢化や後継者不足という課題はあるものの、地域外からの新しい人材を受け入れ、官民一体となって「ビールの里」を目指すことによって、遠野のホップを未来に繋げる新たな挑戦を始めています。2021年には、新ブランド「TONO Japan Hop  Country」を立ち上げ、遠野市の魅力を発信する体制を整えました。

TONO Japan Hop Countryでは、遠野市ならではの体験ができるツアーなどを紹介しています。また、8月末には、ホップの収穫を祝う遠野ホップ収穫祭が開催されます。日本随一のホップ生産地・遠野市で、その魅力をぜひ味わってみてください。
遠野ビアツアーズ
遠野ホップ収穫祭

文:富江弘幸

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