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2023.06.05

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【開催レポート】新規就農者向けホップ農作業体験会

2023年5月13日に岩手県遠野市で開催された新規就農者向けホップ農作業体験会の内容をレポートします。体験会は今後も開催しますので、参加を検討中の方はぜひご覧ください。

今回は新規就農者を検討している方向けの行程となっております。また、開催日によって内容も変わりますので、参考としてご確認いただけると嬉しいです。

今回のレポートは、JICA海外協力隊候補生の長谷川さんが書いてくれました。遠野市では、JICAと連携し、グローカルプログラムを実施中です。

グローカルプログラムとは、JICA海外協力隊合格者の内、帰国後も日本国内の地域が抱える課題解決に取り組む意思を有する希望者に対して、日本の地方自治体や団体等が実施する地域活性化の取り組みにOJTとして参加する研修です。日本国内の地域活性化の取組みを知る事で、海外での協力隊活動においても有益な実務経験や知見を得る目的があります。長谷川さんは、遠野市での研修後、派遣前訓練を経て2023年の秋頃にJICA海外協力隊としてアフリカのウガンダに派遣予定です。

JICA海外協力隊候補生の長谷川さん

長谷川さんも遠野市に来て初めてホップに触れたそうです。長谷川さんの視点で、当日の様子をご紹介します。

講義(日本産ホップや遠野市の取り組みについて)

2023年5月13日、岩手県遠野市でホップ農作業体験会が開催されました。当日は3名の方が参加し、ホップについてのレクチャーを通じて学びを深めると共に、畑での農作業体験実習を行いました。ホップについて素人の私(長谷川)にとっても学びの多い大変貴重な機会となりました。

まず、ホップ畑に行く前に講義の時間です。最初にそれぞれ軽く自己紹介を行った後、ホップ栽培コーディネーターとして活動されている神山拓郎さんからホップについてのレクチャーがありました。

講義の様子。世界的なホップの研究者・村上博士(写真左)も飛び入り参加

ホップについて参加者に尋ねると「どんな植物か見たことない」「ビールに原料として使われているのはなんとなく知っているけど、どんなものか知らない」といった声が聞こえてきました。そんな疑問を解消するべく神山さんがホップについて一つ一つ分かりやすく説明しました。

例えば、ホップは多年生の蔓性植物で株で繁殖します。一度株を植えると15〜30年ほど同じ株で栽培ができるので、毎年種をまきません。株には雄株・雌株がありますが、ビールの原料として使用される毬花(きゅうか)をつけるのは雌株だけです。雌株のみ栽培に使用され、雄株は主に品種改良の際に使用されます。

ホップは4月〜9月頃にかけて栽培され、蔓の背丈は5m〜7mまで成長します。株で繁殖するのに雌雄の株が存在している点や、毎年短期間で一気に成長する点が他の植物と違って変わっているなと思いました。参加者の方々も真剣にメモをとる姿が印象的で、ホップの品種や海外産との違い、収穫時期や反収(面積あたりの収穫量)など積極的な質問がありました。

続いて、ホップ栽培の現状や遠野市の取り組みについての説明がありました。遠野市は日本産ホップの日本随一の産地であり、今年で60周年を迎えます。ただし、生産量はピーク時の6分の1にまで減少し、農家の高齢化や後継者不足、施設の老朽化など様々な問題を抱えているのが現状です。それでも新規就農者も少しずつ増え、今では生産量の3分の1を新規就農者の方が占める割合になり、施設の改修計画が進むなど明るい兆しも出てきています。

遠野市も未来に向けたまちづくりとして「ビールの里構想」を掲げていて、その根幹をなすホップ栽培について全面的にバックアップしています。そんな遠野市の取り組みは、新規就農を検討している参加者の皆様にも魅力的に感じてもらえたように思います。

ホップの乾燥施設を見学

講義や意見交換の後は、ホップの乾燥施設に移動し、見学を行いました。そこではホップの乾燥方法や収穫時の稼働状況などの説明がありました。ホップは収穫直後から鮮度や品質が落ちていってしまうので、保存性を高めるためにすぐに乾燥させる必要があります。

乾燥施設見学の様子

収穫は8月の中旬から9月にかけて一気に行われるため、収穫時期は乾燥施設もフル稼働するようです。株から芽が出て5m〜7mの高さに成長し、毬花をつけて収穫、乾燥までが4月〜9月の約半年で進んでいくので時間と手間もかかります。そんなホップ栽培の最終工程となるので感慨深いものがあったのと、施設の大きさや機械から遠野のホップ栽培の歴史を感じました。

昼食・休憩の時間

施設の見学後は遠野醸造TAPROOMに移動し、皆で昼食を楽しみました。オシャレで美味しい料理に参加者の方々にも楽しんでいただけました。昼食の合間に遠野醸造で醸造を担当する有賀さんより、ビールの醸造設備について案内がありました。ビールの仕込みを行う釜や保存方法などについての説明や、冷蔵庫に缶で保存されている状態のビールなどお店の裏側も見学することができました。

また、保存しているホップの毬花や加工したペレットも見せていただきました。「ホップってこんなものなんだ」「ビールの匂いがすごいする」「思ったよりも香りが強い」などといった参加者の声がありました。実物を見ることでどんな物なのかイメージが沸き、匂いも感じて頂くことでよりホップへの理解が深まるように感じました。私自身も初めて実物を見て、ホップの匂いなどを体験させていただきました。

ホップ畑での農作業体験

午後からは5年前に遠野市に移住し、現在は若手ホップ農家として独立されている中村さんの畑を訪れて、農作業体験を実施しました。今回は株から伸びてきた芽を垂らした糸に括り付ける「誘引」という作業を行います。初めに中村さんから、ホップ畑や誘引作業について説明がありました。

参加者からは「思ったよりも棚が高くてびっくりした」、「ホップってこんな蔓をしてるんだ」という声が。

中村さんと農作業をする中で、ホップ栽培の魅力や大変な事、休日や冬の過ごし方、収入面や環境面について積極的に意見交換されていました。色々とお話がある中で、中村さんのホップ栽培に対する熱い思いも感じました。印象に残っているのは中村さんの「ホップ栽培は手作業や時間がかかることも多く大変な時も多いけど、作業の結果が生育状況や収穫に分かりやすく反映されるから面白い。収穫は各農家が協力して行うから一体感も得られるし、収穫の喜びは他の作物では味わえないもの」と話されていた点です。ホップ栽培は手間がかかることも多いですが、頑張った分結果として現れるのはやりがいも喜びも感じやすいと思いました。

また、遠野市のホップ農家は、横の結びつきや仲間意識が強く、日頃から良く情報交換もされていて、時には手助けもします。この結びつきは私が研修で各農家さんにお伺いをしていても特に強く感じます。収穫は各農家が協力して街全体で行う一大イベントです。「農業=個人で行うもの」というイメージがある中、皆で協力して行う一体感が得られるのも遠野のホップ栽培の魅力の一つだと感じました。

誘引作業を体験する参加者

途中休憩を挟みながら約3時間ほど農作業体験を行い、その後遠野市役所に戻って体験会は終了。参加者の方々は「ホップやホップ栽培、遠野市の取り組みついて色々と知ることができた」「若手農家の方と直接話すことができ、大変なことややりがいなどを聞けて良かった。ホップの栽培の魅力についても知ることができた」といった感想を話されていました。参加者の方々は農業未経験でしたが、畑での体験会も積極的に作業に取り組まれており、充実した体験会になったようでした。また休憩の際には参加者の方同士で色々とお話があり、親睦を深めることができたように思います。

全体を通じて

参加者の方々にとってホップ栽培、新規就農に関して知ることができる良い機会になった様で、遠野市の取り組みやホップ栽培についてかなり興味を持っていただけたと思います。中でもホップ農家の結びつきや遠野市の一体感はここにしかない物で、参加者の方々にそのあたりの魅力についても感じていただけたように思います。

参加者の方々の充実した表情をみて、イベントにサポートとして参加できて本当に良かったと思いました。また、自分自身にとってもホップのことからイベントの企画、実施についても大変勉強になる機会でした。ホップは日常生活でも中々関わることのない作物だと思いますが、講義を受けたり、実物をみたり、畑にきて農作業を体験することで理解を深めることができます。植物的にもかなり特徴的なので、知れば知るほど面白い作物です。

最後になりますが、遠野市はホップやビールを軸にビールの里構想の実現に向けて官民一体となって取り組んでいます。皆が同じゴールに向かって頑張っている姿勢やそこで生まれる”楽しさ”や”面白さ”を感じることができる点が遠野市の何よりの魅力だと感じています。

文:長谷川大起(JICA海外協力隊候補生)

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