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【遠野市ホップ栽培の最大の課題】乾燥施設の大規模改修を開始します
岩手県遠野市でホップ栽培が始まって今年で60年。私たちは、遠野市のホップ栽培における最大の課題であった、老朽化した乾燥施設の大規模改修工事を始めます。しかし、施設の改修には多額の費用がかかり、皆様からの寄附金が必要です。これからも遠野市でホップ栽培を続けていくために、皆様の応援をお願いします。
遠野市とホップ
ビールの味の決め手といわれる、ホップ。岩手県遠野市は日本随一のホップ生産地として、60年にわたりホップ栽培を続けてきました。美しい里山の中で高く育つホップのグリーンカーテンや、その収穫作業風景は遠野の夏の風物詩です。
しかし、ホップを栽培する農家数の減少によって、その景色も少しずつ失われているのが現状です。遠野市のホップ生産量・生産面積は、ピーク時から6分の1以上も減少しています。
そこで、私たちは「ビールの里構想」を進めています。日本産ホップの持続可能な生産体制の確立を通じて、地域活性化を目指し、ホップの魅力を最大限に活用しながら、官民一体となって未来のまちづくりに取り組むものです。
近年、この取り組みが遠野のまちに活気をもたらしています。毎年8月に開催される「遠野ホップ収穫祭」のほか、市内のホップ畑や醸造所を巡る「遠野ビアツアーズ」には多くの参加者が集まっています。遠野市にとって、ホップはひとつの農産物というだけにとどまらない、大きな可能性を秘めているのです。
そんなホップをこれからも遠野市で栽培していくためにも、私たちは生産現場の課題解決に取り組んでいます。将来もホップ栽培を続ける上での最大の課題は、乾燥施設の老朽化です。遠野市でホップ栽培が始まって60年の今年、いよいよ乾燥施設の改修に着手します。
なぜ乾燥施設を改修するのか
ホップを収穫したら、ホップの蔓から毬花だけを選別する選果と、ペレット加工をするためにその毬花を乾燥させる作業が必要です。この作業を行うために、遠野市では現在2つの乾燥施設が稼働しています。
この乾燥施設を改修する理由について、以下でご説明します。
理由1:老朽化が進んでおりいつまで稼働するかわからない
乾燥施設では、40年以上前に導入された機械が現役で、毎年修繕を繰り返してなんとか維持をしています。早く大規模な修繕をしないと、この先いつまで稼働できるかわからない状況なのです。
乾燥施設が壊れてしまうと、その時点で栽培が止まってしまいます。また、老朽化による火災などのリスクもあります。他のホップ産地では、乾燥施設の老朽化を理由に、栽培を止めてしまった例もあるそうです。
理由2:効率化によって農家の負担を減らしたい
40年以上前に導入された機械を稼働させると、人手が必要で、特に人件費などが多くかかってしまうという課題があります。さらに、乾燥施設を運営するための修繕費用や稼働費用などは毎年増加傾向にありますが、それを負担する農家数が減少しているため、ホップ農家の利益を圧迫してしまっています。
さらに近年、燃料代や肥料代、栽培に使う資材の高騰も重なって、ホップ農家の収益構造はますます厳しくなっているのが現状です。持続可能なホップ栽培を実現するためには、この収益構造を改善しなければなりません。そのためには、大規模改修によって、効率化・省力化を目指すことが必要なのです。
以上の理由から、遠野でホップの栽培を続けるためには、乾燥施設の改修が絶対に必要なのです。
改修費用とスケジュール
遠野市で持続可能なホップ栽培を実現するため、遠野市やホップ農家、民間企業が一緒になり、数年かけて、乾燥施設の改修計画を検討してきました。当初は、新しい機械を導入することも検討しましたが、海外から輸入するしかなく、費用も数億円と非常に高額になったため断念。そのため、大規模な改修工事に切り替え、計画を進めることにしました。
通常、改修にかかる費用は、施設を利用するホップ農家が負担することになります。しかし、今回の改修工事費用をホップ農家の負担にしてしまうと、利用料がさらに上がることになり、一気に離農が進んでしまうリスクがあります。
そのため、私たちはふるさと納税の制度を活用して資金を集めることにしました。国の補助事業なども検討しましたが、うまく活用できるものがないため諦めました。現時点では、ふるさと納税によって集めた財源を工事費用に活用しようと考えています。
2023年6月、遠野市は、ふるさと納税の財源を活用した「日本産ホップ栽培基盤整備強化事業(予算額 ¥23,925,000)」の実施を決定しました。これは乾燥施設の燃焼炉を更新するための事業です。
また、改修工事は現状の栽培を維持しながら進めるため、工期を4回に分けて実施します。2023年の燃焼炉更新は、第1期目の工事にあたります。
これは、現状のペースで寄附金が集まった場合の想定スケジュールであり、今よりも寄附金が多く集まれば工事は早まります。逆に、寄附金が計画通りに確保できない場合には、改修工事がストップする可能性もあります。
この数年で集まった寄附金によって、初年度の工事費用の目処が立ったので、改修工事を始める決断ができました。
寄附の方法
数年にわたる改修工事を進め、ホップ栽培を持続可能にしていくために、全国各地の方からの寄附のご協力をお願いしています。以下で、寄附の方法についてご紹介します。
個人がふるさと納税で寄附をする場合
遠野市へふるさと納税で寄附をする際に、寄附先を「ビールの里プロジェクト」に指定いただくと、寄附金の一部が栽培現場の課題解決に使われます。
なお、ふるさと納税ポータルサイトからは、返礼品なしの寄附をすることも可能です。この場合、寄附金は全額課題解決に役立てられます。返礼品なしの場合でも、寄附先として「ビールの里プロジェクト」の指定をお願いします。
また、遠野市民の方は、必要書類を遠野市産業部商工労働課宛へ郵送、ファックス、電子メールでお送りいただくことで、寄附を申し込むこともできます。詳しくは下記からご確認ください。
法人が寄附をする場合
法人からの寄附は、企業版ふるさと納税や、一般の寄附金などの方法があります。詳しくは、遠野市産業企画課までお問い合わせください。
遠野市のホップ栽培を持続可能にするために
私たちはこれまで、ホップ栽培現場の課題を解決するために、新規就農者の募集と育成、農繁期の人手不足解消、面積あたりの収穫量の改善など、さまざまな改善策を行ってきました。
しかし、今起きていることの改善は進められても、乾燥施設が故障して使えなくなってしまうと、未来に遠野市のホップ栽培を残すことができません。私たちにとって老朽化する乾燥施設の改修は大きな課題であり、その課題を解決するために数年間奔走してきました。
そしてついに、遠野市のホップやビールをきっかけに出会えた多くのファン、仲間の皆様からの寄附によって、ようやく最初の工事を始められる段階までたどり着くことができました。本当にありがとうございます。皆様からの応援がなければ、私たちは諦めていたかもしれません。
今年、最初の工事が始められるとはいえ、まだスタートラインに立った状態です。総事業予算が集まっていない中でのスタートになってしまいますが、早く進めないと本当に故障や離農のリスクによって栽培が止まってしまう可能性があるのです。寄附や工事の進捗は、TONO Japan Hop CountryのWEBサイトやSNSでもご報告していきます。
第2期、第3期、第4期と工事が進められるように、引き続き応援のほどよろしくお願いいたします。
文:田村淳一(BrewGood)
校正:富江弘幸
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